実はボクも…。
2026/10/09
もう50年以上も前の話になる。
ボクは高校入学時から、定期的に父親の経営する会社を手伝っていた。
会社と言っても、正規の従業員がいたワケではない。
契約労働者が数人いて、建築現場でユニットバスの据え付け工事を行っていた。
高校進学時まで、おそらくボクは「勉強ができる」類いの人間だった。
進学した高校も、自称「進学校」として名を馳せていた。
ところがボクには、この高校を心底好きになることができなかった。
ある日、別の高校に行った友人と街中を歩いていた。
翌日、学校に到着したボクに、同級生が「昨日のアイツ…、どこ高校?」と尋ねてきた。
「〇〇高校だよ」とボクは返した。
すると「あ~、あのバカ高校ね」…、そういって同級生は鼻で笑った。
そんな「イヤミ」な高校だった。
その一件以来、ボクの足は、自然と学校から遠のいていった。
けれどもボクには生きていく道があった。
ユニットバスの据え付けだ。
日給で10000円にもなる。
だから週に3日は建築現場に通った。
勉強はしなくなった。
同級生と同じような人種にはなりたくなかったからだ。
けれども友人はできた。
ボクと同じような境遇にあった、はみ出し者たちだ。
ところが、そういったヤツに限って早々に学校に見切りをつけていった。
一人消え…、また一人消え…。
その結果、ボクの高校での友人は、たった一人となった。
そしてその彼もまた「登校拒否」に陥った。
学校に行くと決めた日、ボクは遠回りをしてその友人を学校に誘った。
友人は10時頃、やっと起きてきて、なぜか風呂に入った。
友人の母親(祖母も)がすっかりボクを気に入って、毎回、昼食(友人にとっては朝食)まで用意してくれた。
だからボクと友人が学校に行くときは、いつも5時間目の授業の途中だった。
そんな思いまでして、必死になって(笑)通っていた高校の授業中にちょっとした事件があった。
現代文の授業だった。
なんだか知らないけど、ギラギラした若手の新人教員が担当していた。
そのやる気マックスの新人教員が、突然ボクに質問してきた。
「おい、井上。ここの主人公の会話部分を読んで、お前はどう思った?」
「あぁ~、〇〇だと思いました」
「違う!」
「違う?!」
「お前は間違っている!」
「ちょっと待ってくださいよ。先生が『どう思う?』で訊いてきたからボクは自分が思ったことを言っただけです。それのどこが違うんですか?!」
「なんだその態度は!?」
「それはこっちのセリフですよ!」
「ちょっと来い!」
そう言って、その新人教員はボクを職員室に連れて行った。
友人が遠くからボクに声をかけた。
「負けるな、井上!」
職員室には、当時のボクの担任がいた。
ボクには、この担任を含めてたった二人だけ心を許せる先生がいた。
「お前、何か…、しちゃったの?」
「ご心配なく。たぶん…、ボク、勝ちます」
すると件の新人教員が、未だ興奮を抑えきらずにボクのところへと突進してきた。
で、ボクに一冊の本を開いて差し出した。
「ここを見てみろ」
それは、先生のための指導書…、つまりは教員のアンチョコ本だった。
「ここにはな…、ほら、『主人公は〇〇のような心情であった』…、そう書いてあるんだよ。だからお前のは間違いだ!」
「へぇ~、先生ってこんなのを見て授業してたんですか。ちょっと尊敬できないな~」
「おい、井上!」
担任が割り込んできた。
「まぁ~、そのくらいにしておけ」
「ボウは自分の思ったことを言っただけです。それなのに…、この人ったら…」
新人教員は最後にこう言った。
「お前みたいなヤツはろくな人間にならないぞ!」
「〇〇先生、それはないでしょ!」
見ると担任が真っ赤な顔をして新人教員に詰め寄っていた。
「まぁ、まぁ、二人とも落ち着いて…」
結局、ボクが二人をなだめて、その場は収まった。
ちなみにこの時の新人教員は、その後15年ほどしてから教育委員会に招集された。
なんでも指導主事とやらに出世(?)して、現場の教員を指導する立場になったらしい。
つまり、そんなことがあったりもして、ますますボクの足は学校から遠のいていった。
まちがいなく「学校不信」「教員不信(担任とその相棒は除く)」に陥った。
ボクのヘソは完全に曲がって、背中についてしまうほどだった。
つまりボクは「日給10000円」に完全に負けて、「登校拒否予備軍」になった。
ボクの高校生活3年間の総欠席数は199日、遅刻数は333回であった。
けれどもボクは、今でもこうして偉そうに高校で教員として働いている。
いや、働かせてもらっている。
一応…、ちゃんと生きている。
それは件の友人とて同じだ。
登校拒否、もとい、不登校にもいろいろある。
その中にあって、ただ一つの真理…。
それは「自分を見失わなければ、絶対に道は拓ける…」ということだ。
「自分を見失わない」…、これを貫いてほしい。
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